シベリア鉄道の車両に乗り込むと、ひんやりとした空気が身を包んだ。はじめは緊張のせいだと思っていたけど、しっかりと空調が効いていたためだった。

自分の席へ向かう。上下2段にベッドがあり、それが向かい合ったボックス席がある。通路をはさんだ向かい側には、壁に沿って上下2段にまたベッドがあった。ベッドには真っ白なシーツが敷かれ、寝具が用意されていた。
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とりあえずベッドに座る。重いバッグパックを床におろした。

僕の席はボックス席の下段だった。座っていると、進行方向に背を向けることになる。逆の席がよかったなぁ。向かいの席には、親子連れがいた。子供はまだ小さい。お母さんと小さな男の子がじっとこちらを見つめてくる。外国人が来てびっくりしたのか、最初はじっと見つめてきたが、すぐに調子を取り戻し、中断していた食事を再開した。

僕はずっと座って、呼吸を整え、発車するのを待った。シベリア鉄道はすぐに動き始めた。

ウラジオストクの町並みを見ながら、感慨に浸っていると、向かいの男の子が来ている服にドラえもんのワッペンが縫い付けられているのを見つけた。ロシアでも有名なのだろうか。
ドラえもんの絵を書いて見せてみる。反応は薄い。仲良くなろうとしたが失敗だ。持っていたコアラのマーチを上げてみる。お母さんにやんわりと断られてしまった。知らない外国人から物をもらうのは心配だったかな。

シベリア鉄道はウラジオストクから終点のモスクワまで、6泊7日だ。ずっと車中泊。途中下車することはもちろんできるが、再度乗車するときはまたチケットが必要なので、今回は途中下車せず、終点まで一直線に向かう。

僕が乗り込んだ3等車にはシャワーがない。シャワーは1等車だけだったはずだ。車掌に頼んで(ちょっとした心付けとともに)、シャワーを借りることはできるらしいが、1周間もシャワーを浴びずに過ごしたらどうなるか興味があったので、あえてシャワーは浴びないことにした。どうなるだろうか。

ひとまず、少しでも快適に過ごすため、ハーフパンツとTシャツに着替えた。「ついに始まった!」という思いととともに、高鳴る気持ちを沈めるべく、連結部へタバコを吸いに行く。流れる景色を見ながらタバコを吸う。日本製のハイライトだ。

慌ただしかったが、本当にシベリア鉄道での旅がスタートした。 

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